はじめに:サッカーは「点数にならない力」を育てやすい習い事です
「サッカーを習わせると、勉強以外にどんな力がつくの?」と気になっている保護者の方へ。
結論からお伝えすると、サッカーは非認知能力(社会情動的スキル)を育てやすい環境がそろった習い事です。
ただし、「サッカーをやれば自動的に育つ」わけではありません。
伸びるかどうかを大きく左右するのは、コーチや保護者の関わり方です。
試合の中では、子どもは数秒ごとに「パスか、ドリブルか」を自分で決めます。
ミスをしても、すぐに次のプレーが始まります。
そして、仲間と協力しなければゴールは生まれません。
この「判断の連続」「失敗の多さ」「チームで動く」という3つの特徴が、考える力・やり抜く力・協調性を鍛える土台になります。
この記事では、次の順番で解説します。
- 非認知能力とは何か(OECD・国の資料での位置づけ)
- サッカーのどんな場面で、どんな力が育つのか
- 伸ばす関わり方と、伸びを止めてしまうNG対応
- 家庭でできること
- FCハマが大切にしている取り組み
非認知能力とは?OECDの「社会情動的スキル」をやさしく解説
「テストの点数では測りにくい力」の総称
非認知能力とは、ざっくり言うと読み書き・計算・知識といった認知的な力以外の力を指す言葉です。
たとえば、粘り強さ、自分をコントロールする力、人と協力する力、自信などが含まれます。
ただし、この言葉には注意点があります。
文部科学省の中央教育審議会の部会(教育課程企画特別部会)に提出された資料でも、非認知能力の定義や構成要素は自明ではないと指摘されています。
国立教育政策研究所の報告書(2017年)も、非認知能力は性格や自尊心、自己制御などを含む幅広い呼び方であり、厳密には「能力」とは言いにくいものも含まれると指摘しています。
つまり、はっきりした一つの定義がある言葉ではないということです。
OECDは「社会情動的スキル」として3つに整理
そこでよく参照されるのが、OECD(経済協力開発機構)が2015年の報告書『Skills for Social Progress』で示した社会情動的スキルという枠組みです。
OECDは、これからの子どもには、目標を達成する力、他者と効果的に協働する力、情動(感情)をコントロールする力が欠かせないとしています。
そして、こうした力は政策や学校、家庭での関わりによって育てていけるという立場をとっています。
日本語版の資料では、社会情動的スキルは「一貫した思考・感情・行動のパターン」として表れ、学校教育やインフォーマルな学習によって伸ばせる力と説明されています。
3つの分類と、その中身は次のとおりです。
| 分類 | 含まれる要素(OECDの例示) | 子どもの姿に置きかえると |
|---|---|---|
| 目標の達成 | 忍耐力、自己抑制、目標への情熱 | うまくいかなくても練習を続ける、やると決めたことをやり抜く |
| 他者との協働 | 社交性、敬意、思いやり | 仲間に声をかける、相手や審判に敬意を払う、ミスした仲間を励ます |
| 情動の制御 | 自尊心、楽観性、自信 | 失敗しても気持ちを立て直す、「次はできる」と前を向く |
「伸ばせる力」であることがポイント
保護者にとって大切なのは、これらが生まれつき決まった性格ではなく、経験の中で伸ばせる力と位置づけられている点です。
OECDの報告書では「スキルはスキルを生む」という考え方も紹介されています。
早い時期に身につけた力が、次の力を身につける土台になるという意味です。
とはいえ、研究結果をそのまま「この習い事をすれば必ず○○が伸びる」と当てはめるのは早計です。
子どもの性格や環境はそれぞれ違います。
「育ちやすい環境がある」くらいの受け止め方が、ちょうどよいでしょう。
サッカーで育ちやすい非認知能力と具体的な場面

では、サッカーのどんな場面で、どんな力が育ちやすいのでしょうか。
よく話題になる6つの力を、練習・試合の場面と結びつけて整理しました。
なお、OECDの分類との対応は、わかりやすさを優先した編集部の整理です。
それぞれの力がなぜ育ちやすいのかは、次の章で理由とあわせて解説します。
| 育ちやすい力 | OECDの分類との対応 | サッカーでの具体的な場面 |
|---|---|---|
| 判断力(考える力) | 目標の達成に関わる(認知的な力とも重なる) | 相手の位置を見て、パスかドリブルかシュートかを一瞬で選ぶ |
| 自己調整 | 目標の達成/情動の制御 | 疲れていても守備に戻る、悔しさを抑えて次のプレーに切り替える |
| 粘り強さ(やり抜く力) | 目標の達成 | リフティングの回数を少しずつ伸ばす、苦手な左足を練習し続ける |
| 協調性 | 他者との協働 | 味方がボールを持ったらサポートに動く、空いている仲間を探す |
| コミュニケーション | 他者との協働 | 「後ろ来てるよ」「ナイス!」など、短い言葉で情報や気持ちを伝える |
| レジリエンス(立ち直る力) | 情動の制御 | 失点やミスのあとでも顔を上げ、次のプレーに集中する |
なぜサッカーは非認知能力を伸ばす習い事に向いているのか
ほかのスポーツや習い事にもそれぞれの良さがあります。
そのうえで、サッカーが非認知能力と相性がよいと考えられる理由を3つに絞ってお伝えします。
理由1:判断の連続で「考える力」が鍛えられる
サッカーは、攻守が目まぐるしく入れ替わり、決まった正解がない場面の連続です。
同じ状況は二度とありません。
だからこそ、「見る→考える→選ぶ→やってみる」というサイクルを、1試合の中で何十回、何百回と繰り返すことになります。
JFA(日本サッカー協会)は2022年に、少人数で行うゲーム(スモールサイドゲーム)のガイドラインを公表しています。
その中では、人数を減らすとプレー回数が増えることや、選手アンケートで特に「味方との協力」の評価が上がったことが紹介されています。
また、ゲームの中で子どもが自分たちで工夫して答えを探しているかを、大人が見守るポイントとしています。
「子ども中心」で考える場面を増やすことが、育成の考え方として重視されているといえます。
理由2:失敗が多いから「立ち直る力」が育つ
サッカーは、ミスが非常に多い競技です。
パスがずれる、トラップが大きくなる、シュートが外れる。
トップレベルの試合でも、ボールを失う場面は珍しくありません。
つまり子どもは、失敗が当たり前の環境で、何度も気持ちを立て直す練習をしていることになります。
この経験が、レジリエンスや楽観性につながると考えられます。
理由3:チームだから「協働する力」が必要になる
サッカーは、ポジションも性格も違う仲間と一つのゴールを目指す競技です。
自分の思いどおりにならない場面で、どう伝え、どう合わせるか。
試合に勝ったときも負けたときも、仲間と気持ちを分かち合う経験があります。
これは、OECDの分類でいう「他者との協働」に直結する経験です。
さらにサッカーには、味方だけでなく、対戦相手や審判がいます。
判定に納得できないときも気持ちを抑え、試合後には相手とあいさつを交わす。
こうした場面は、OECDが例示する「敬意」や「自己抑制」を実際に使う練習の場にもなります。
勝ち負けのある真剣な場だからこそ、相手を尊重する姿勢を身につける意味があるといえるでしょう。
非認知能力を伸ばす関わり方と、伸びを止めてしまうNG対応
同じサッカーをしていても、大人の関わり方しだいで、子どもが得る経験は大きく変わります。
伸ばす関わり方
- 結果より過程をほめる:「ゴールすごい!」に加えて「最後まで走ったね」「声を出していたね」と、取り組みに目を向ける
- 答えを言う前に質問する:「あの場面、何が見えていた?」「次はどうしてみる?」と、子ども自身に考えさせる
- 失敗を学びの材料として扱う:ミスを責めるのではなく、「何が起きたか」を一緒に振り返る
- 小さな目標を一緒に決める:「今日はパスを受ける前に1回まわりを見る」など、達成できるサイズにする
- 仲間への行動を認める:味方を励ました、ボール出しを手伝ったなど、チームのための行動も評価する
伸びを止めてしまうNG対応
| NG対応 | 子どもに起こりやすいこと | 言いかえの例 |
|---|---|---|
| プレー中に外から細かく指示する | 自分で考えなくなる、指示待ちになる | 試合中は見守り、帰り道に「どうだった?」と聞く |
| ミスを強く責める | 失敗を恐れて挑戦しなくなる | 「惜しかったね。次はどうする?」 |
| 結果だけで評価する | 勝てない時期にやる気を失いやすい | 「前より○○ができるようになったね」 |
| きょうだいや他の子と比べる | 自信を失う、仲間を競争相手としか見なくなる | 「先月の自分」と比べる |
| 親が先に答えを出してしまう | 振り返りが「親の反省会」になる | 子どもの言葉を最後まで聞く |
学年に合わせた関わり方のめやす
子どもの発達段階によって、響く声かけは変わります。
あくまで目安ですが、次のように意識すると関わりやすくなります。
| 学年 | 意識したいこと | 声かけの例 |
|---|---|---|
| 1・2年生 | ボールに触れる楽しさを最優先に、「やってみた」ことを認める | 「たくさんボールにさわれたね」 |
| 3・4年生 | 仲間との関係が深まる時期。協力した場面や工夫した点に目を向ける | 「あのパス、どうして出そうと思ったの?」 |
| 5・6年生 | 自分で目標を立て、振り返る力を育てる。大人は聞き役に回る | 「次の試合までに何を準備する?」 |
低学年のうちは、上手にできたかどうかよりも、「楽しい」「またやりたい」という気持ちを大切にしてください。
その気持ちが、やり抜く力の出発点になります。
高学年になると、自分のプレーを言葉で説明できるようになってきます。
親が評価するよりも、子ども自身に評価させる場面を少しずつ増やしていくのがおすすめです。
大切なのは「安心して失敗できる場」
非認知能力の多くは、挑戦と失敗をくり返す中で育ちます。
失敗を前向きに受け止めてもらえる環境では、子どもは安心して挑戦を続けられます。
だからこそ、クラブでも家庭でも「失敗しても大丈夫」と思える空気をつくることが、何よりの土台になります。
家庭でできること:考える力・やり抜く力を伸ばす5つの習慣

非認知能力は、練習や試合の時間だけで育つものではありません。
家庭での何気ない会話が、サッカーでの経験を「学び」に変えてくれます。
1. 振り返りは「質問」から始める
試合のあと、「どうだった?」「一番楽しかったプレーは?」と、まずは子どもに話してもらいましょう。
アドバイスは、子どもが話し終えてからで十分です。
2. 「よかったこと」と「次にやりたいこと」をセットで聞く
「よかったことを1つ」「次にやってみたいことを1つ」と聞くだけで、立派な振り返りになります。
反省ばかりにならず、前向きな気持ちで次につなげられます。
3. 小さな目標を一緒に決めて、記録する
「リフティング10回」「毎朝ボールタッチ5分」など、子ども自身が決めた目標をカレンダーに記録します。
できた日が増えていくと、やり抜く力と自信の両方が育ちます。
4. 準備を自分でさせる
持ち物の準備や、水筒・ウェアの用意を子ども自身に任せてみましょう。
たとえば前日の夜に「ボール・すね当て・水筒・タオル」を一緒に声に出して確認し、慣れてきたら確認役も子どもに任せます。
忘れ物をしても、それも学びです。
自分のことを自分で管理する経験は、自己調整の練習になります。
5. 感情を言葉にする手伝いをする
負けて悔しいときは、無理に励まさず「悔しかったね」と気持ちを受け止めます。
自分の感情に名前をつけられるようになると、次第に気持ちの切りかえも上手になっていきます。
場面別・家庭での声かけ例
迷いやすい場面ごとに、声かけの例をまとめました。
言葉そのものより、「まず気持ちを受け止め、次に子どもに考えてもらう」順番を意識するのがコツです。
| 場面 | 最初のひと言 | 次に聞いてみたいこと |
|---|---|---|
| 勝った日 | 「おめでとう。どこが一番うれしかった?」 | 「勝てた理由は何だと思う?」 |
| 負けた日 | 「悔しかったね。よく最後まで走ったね」 | 「次の練習で試したいことはある?」 |
| 大きなミスをした日 | 「チャレンジしたからこそのミスだね」 | 「同じ場面が来たら、どうしてみる?」 |
| 出番が少なかった日 | 「ベンチから何が見えた?」 | 「出たときにやりたいことは?」 |
| 仲間とうまくいかなかった日 | 「何があったのか教えてくれる?」 | 「相手はどう感じていたと思う?」 |
| 練習に行きたくない日 | 「何か気になることがある?」 | 「どうなったら行きたくなりそう?」 |
答えがすぐに出なくても大丈夫です。
「考えてみたけれど、まだわからない」も立派な振り返りです。
FCハマの取り組み:サッカーを通じて「成長するコツ」を学ぶ
横浜市都筑区で活動するFCハマが掲げている考え方は、ここまでお伝えしてきた内容と重なる部分が多くあります。
MissionとVision
FCハマのMissionは「成長するコツをサッカーを通じ楽しみながら学ばせる」です。
そしてVisionは「自分の意志を持って目標を達成できる大人になってもらう」ことです。
サッカーがうまくなることはもちろん大切です。
それと同時に、サッカーを通じて身につけた「考え方」や「成長のしかた」を、将来どんな分野でも生かせる大人になってほしいと考えています。
また、Football Philosophyとして「個の判断の集合体がチームになる」「科学的な思考でサッカーに取組む」を掲げています。
一人ひとりが自分で判断できることが、チームの強さになるという考え方です。
試合・練習・動画・Webミーティングで「考え方」を使う
FCハマでは、試合や練習に加えて、動画での振り返りやWebミーティングも行っています。
その中で、ロジカルシンキング、ラテラルシンキング、クリティカルシンキング、PDCAといった考え方を使いながら、自分やチームのプレーを分析します。
それぞれの考え方は、ロジカルシンキング、ラテラルシンキング、クリティカルシンキングの各記事でも紹介しています。
自己分析と他己分析
振り返りでは、自分で自分のプレーを分析する「自己分析」と、仲間のプレーを分析し合う「他己分析」に取り組んでいます。
自分を客観的に見る力と、仲間の良さに気づく力。
この2つは、目標の達成と他者との協働の両方につながる経験です。
褒めることを多く
FCハマでは、褒めることを多くするよう心がけています。
できたことを認められる経験が、次の挑戦への意欲になるからです。
勝つことも大切にしながら、一人ひとりの成長を同じように大切にしています。
「徹底的に楽しむ、圧倒的に成長する」という姿勢で、全選手に出場機会をつくり、ポジションも固定しすぎずに複数を経験してもらっています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 非認知能力は何歳ごろから育ちますか?
OECDの報告書では、早い時期に身につけた力が次の力の土台になるという考え方が示されています。
ただし、何歳からでないと伸びないというものではありません。
小学生の時期も、仲間との関わりや挑戦の経験が増える大切な時期です。
Q2. サッカー初心者でも非認知能力は育ちますか?
はい、育つ機会は十分にあります。
むしろ、できないことが「できる」に変わっていく過程そのものが、粘り強さや自信を育てる経験になります。
FCハマでも、多くの選手が初心者からスタートしています。
Q3. 試合に出られない子は、非認知能力が育ちにくいのでしょうか?
試合はたくさんの判断や感情の動きを経験できる場なので、出場機会は大切だと考えられます。
FCハマでは、全選手に出場機会をつくることを方針としています。
クラブを選ぶ際には、出場機会の考え方を確認しておくと安心です。
Q4. 家で何をすれば一番効果的ですか?
一つ選ぶなら、「試合のあとに質問から始める振り返り」です。
子ども自身が言葉にすることで、経験が学びとして整理されます。
親が答えを言うより、子どもの言葉を待つことを意識してみてください。
Q5. 非認知能力が伸びたかどうかは、どう見ればいいですか?
テストのように点数で測るのは難しい力です。
「負けたあとに自分から次の目標を話した」「仲間のミスに声をかけていた」など、行動の変化に目を向けてみてください。
数か月前と比べて、小さな変化を見つけて言葉にして伝えることが、さらなる成長につながります。
参考資料
- OECD「Skills for Social Progress: The Power of Social and Emotional Skills」(2015年)
- 国立教育政策研究所「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書」(2017年)
- 文部科学省 教育課程企画特別部会 資料「学習指導要領の構造化を進めるに当たっての視点」(2025年4月25日)
- JFA「スモールサイドゲーム ガイドライン」(2022年)
まとめ:サッカーは「考え、やり抜き、協力する」経験の宝庫
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 非認知能力は、読み書き・計算以外の力の総称で、明確な一つの定義がある言葉ではない
- OECDは「目標の達成」「他者との協働」「情動の制御」の3つに整理し、経験の中で伸ばせる力と位置づけている
- サッカーは「判断の連続」「失敗の多さ」「チーム」という特徴から、これらの力が育ちやすい環境がそろっている
- ただし、伸びるかどうかは大人の関わり方しだい。結果より過程を認め、答えより質問を
- 家庭では「質問から始める振り返り」と「小さな目標」が取り入れやすい
サッカーは、子どもが自分で考え、うまくいかない時間を乗りこえ、仲間と喜びを分かち合える習い事です。
その経験を「成長するコツ」として身につけられるかどうかは、子どもを取り巻く大人の関わり方にかかっています。
FCハマの体験会は無料で、1か月間は何回でも参加できます。
動きやすい服装と飲み物があれば十分です。
お子さんが仲間と一緒に考え、挑戦する姿を、ぜひ一度グラウンドでご覧ください。お申し込みは体験会のお問い合わせページから受け付けています。
筆者紹介

FCハマ代表
水島 健人
2022年にFCハマを再始動し代表を務めている。FCムサシ一期生で、小学校6年生の時に横浜市大会で優勝。中学では、横浜F・マリノス(菅田)へ入団。高校では日本大学高等学校へ入学。大学では日本大学からVERDRERO港北へ移籍し社会人サッカーへ。2015年には神奈川県1部リーグで優勝。ビジネスでは、上場企業からカーブアウトさせた事業を基にEmMatch株式会社を立上げ、経営者として「EcoNiPass」や「BanSo」を展開している。